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今日も生かされて

.07

甦れ美しい日本

老人ホームの在り方を考える

独特の理念を持ち外食産業を勝ち抜くワタミの渡邉美樹社長が介護業界に一石を投じる話題。
国際派日本人養成講座より転送
http://archive.mag2.com/0000000699/index.html
■1.「挽回の機会は永遠に巡ってこない」■

 毎朝7時、東京・羽田のワタミ本社で、渡邉美樹社長は薄墨
の筆ペンで、挨拶状に署名する。介護事業の子会社「ワタミの
介護」が運営する老人ホームで天寿を全うした入居者の遺族宛
の挨拶状である。お悔やみの言葉と、ワタミの施設を選んでく
れたことへの感謝の言葉が綴ってある。挨拶状は週5通ほど。
平成16(2004)年に介護事業に参入して以来の日課である。

 渡邉氏は故人の冥福を祈りながら、自問する。

 食事、入浴、居住空間、レクリエーション・・・。自分
たちはこの故人に終(つい)の住処(すみか)としての安
らぎを提供できたのだろうか。 [1]

 普通の事業なら消費者が不満を抱いても、お詫びしたり、商
品を交換するなどして信用回復の機会はある。しかし介護の世
界では、不満を抱きながら世を去った入居者がいたとしたら、
挽回の機会は永遠に巡ってこないのだ。

「地球で一番多くの『ありがとう』を集めるグループになろう」
をスローガンとするワタミ・グループの介護事業への挑戦は、
まさに真剣勝負である。

■2.「病院の経営を見てもらえないか」■

 渡邉氏が介護事業に乗り出したのは、ひょんな事がきっかけ
だった。平成15(2003)年、「大阪の岸和田市にある病院の経
営を見てもらえないか」という話を持ち込まれた。ちょうど念
願の学校経営に乗り出した頃で、とても手が回らないと断った
のだが、相手も諦めない。よほど危機的状況にあるのだな、と
思って、経営の現状だけでも見てみましょう、と答えた。

 この病院の負債は7億円ほどもあり、金利負担が重くのしか
かって、元本返済の見込みもなかった。医療技術については優
れたプロ集団だったが、足りないのは「経営」だった。「それ
ならば、私が力になれるのではないか」と思った渡邉氏は、負
債をすべて個人で肩代わりして、病院の経営刷新に乗り出した。

 経営者として、まずは赤字体質を解消しなければならない。
問題は日本の医療と介護の仕組みそのものにあることが分かっ
てきた。入院患者のうち半分以上は病院の世界で言う「社会的
入院」だった。病気やケガの治療中でもないのに、介護が必要
だからと入院している高齢者である。

 一方、日本の医療保険制度は患者の入院が長引くほど、支払
われる診察報酬が減額されるという仕組みになっている。これ
は日本の一般病棟の平均入院日数が欧米に比べて極端に長いの
で、医療費抑制のために考え出された制度だった。

 制度の考え方自体には一応の筋は通っているが、この病院は
行き所のないお年寄りを退院させられず、そのため診察報酬は
減っていくのに、コストは変わらない、という事で赤字の泥沼
に陥ってしまったのだった。

■3.「お年寄りは病院を追い出されたら、身の置き場がない」■

 まさに介護や老人福祉制度の欠陥によって、病院が老人ホ
ーム代わりに使われているわけである。渡邉氏は病院の理事会
で、社会的入院患者を退院させるよう強く迫った。理事や現場
のスタッフからは、「ここを追い出された人はどこへ行くので
すか。そもそも行くところがないから入院しているのですよ」
と反発した。

 しかし、社会的入院患者にベッドを占領されていては、本来、
入院の必要な患者に治療を提供できない。さらに社会的入院患
者を抱えたままでは、いずれ病院は倒産し、一般の入院患者も
含めて、一気に放り出されることになる。

 社会的入院患者の退院を促進させつつ、病院の「売り」とし
て「喀血・肺循環治療」と「関節の治療・リハビリテーション」
で日本を代表する医師を揃えた。全国から患者が集まるように
なり、病院の収入は3年間で3割も伸びて、経営は完全に立ち
直った。

 しかし、その一方で、渡邉氏は退院させたお年寄りがどうし
ているのか、気になった。病院の前経営者は社会的入院患者が
退院したあとのアフターケアをするための訪問介護ステーショ
ンを設けていた。そこで渡邉氏も介護用のユニフォームを着て、
何軒か在宅介護の現場を回ってみた。

 なかには自宅で幸せに介護を受けているお年寄りもいたが、
ほとんどの場合、息子夫婦は共働きで、奥さんが出勤前にお昼
を用意して出て行き、お年寄りは一人で冷たくなったご飯を食
べる、というような状態だった。「これはいけない。お年寄り
は病院を追い出されたら、本当に身の置き場がない」と痛感し
た。

 この介護ステーションを発展させ、病院の近くに老人ホーム
を作って受け皿にしよう、という計画が既にあった。渡邉氏は
その計画を受け継いで「レヴィータ岸和田」という高齢者向け
マンションを作った。これがワタミの介護事業の始まりだった。

■4.「洗車機」でお年寄りを洗う介護施設■

 介護サービスの重要性に気づいた渡邉氏は、自らホスピス病
棟でのボランティアを経験し、介護の現場を見て回った。そん
な中で何とも腹立たしかったのが、多くの介護施設で行われて
いる「特殊浴」だった。これは寝たきりのお年寄りを台の上に
横にして、機械でお湯を流し、次に洗剤をかけ、またお湯を流
して、最後に温風で乾かす。まさに自動洗車機である。

 しかも、この特殊浴を寝たきりでない健常なお年寄りにまで
施したがる。本人の意思も確認せず、人前で裸にして洗ってし
まう。それが一番、作業効率が良いからだ。ここには、お年寄
りを「顧客」として捉え、お風呂で温まったとか、さっぱりし
たという「満足」を提供しようという発想が欠如している。

 なぜこんな事が起きるのか。現在の介護保険制度では、入浴
1回につきいくら貰える、という仕組みになっているので、ゆっ
くり湯船に浸かって貰おうが、「洗車機」で短時間で洗おうが、
関係ない。介護する方として、いかに効率的に入浴を済ませて
しまうか、ということしか考えなくなる。

「行政」すなわち「官」の作り上げた福祉の仕組みの中で、老
人介護は、サービス業本来の「お客様にいかに満足を与えるか」
という発想がまったく失われている。一番の問題はここにある、
と渡邉氏は気づいた。

 もう一つ不思議なのが、これだけ老人人口が増加して、「顧
客」が増えているのに、経営の立ちゆかない老人介護施設が多
いという事だった。国から補助金が出ることもあって、「官」
の代理として施設を運用する。「民間に任せたら金儲け主義に
走る」という「官」の常識から、病院と同様、この世界にも
「経営」の2文字が存在しないのだ。

 渡邉氏がビジネスを始めた居酒屋などの外食産業は、「官」
がまったく入り込まず、毎日激烈な競争が行われている。冷め
た焼き魚など出したら、たちまち客足が遠のいてしまう。逆に
フライドチキンで、冷凍鶏肉を新鮮な鶏肉に変えると、確実に
売上を伸ばせる。こういう「民」の世界で鍛えた「経営力」で、
老人介護も改革できるのではないか、と渡邉氏は考えた。
■5.「日々のサービス改善は永遠のテーマです」■

 渡邉氏は、平成17(2005)年3月、神奈川県などに16棟の
老人ホームを展開する「アールの介護」を買収した。34年の
歴史を誇る健全な企業だったが、人材育成が後手に回って後継
者が見つからず、投資会社に身売りした企業だった。

 渡邉氏が現場に入り込んでみると、ここも他の老人ホームと
同様だった。お漏らしをすれば、すぐおむつ。食べ物が噛めな
くなると、何でもかんでもミキサーで砕いたものを食べさせる。
さらにはチューブで栄養食を流し込む「経管食」。足腰が弱る
とすぐ車椅子。さらに体力が落ちるとすぐに寝たきり。

 渡邉氏は経営幹部を集めて、自らの経営方針をこう説いた。

 老人福祉は、まぎれもないサービス産業です。サービス
産業において、日々のサービス改善は永遠のテーマです。
よりおいしくより安全な食事、より気持ちのいいサービス、
より使いやすい施設、それを求め続けるのがこの仕事だと、
私は思っております。ご入居いただいたお客さまから「あ
りがとう」と常に感謝されるようなそんな場であり続ける
ためには、絶対に努力を止めてはダメなのです。[1,p181]

 この方針に反発する現場スタッフは少なくなかった。一気に
200人、約3分の1が渡邉氏の方針についていけずに辞めて
いった。

 これまでの福祉事業の「常識」から「私たちは十分にお年寄
りに尽くしている。これ以上、何をやれというのだ。『お客さ
まの幸せが第一』というのはわかるけど、そこまで身を粉にし
て働いて、私たちの幸せはどうなるんだ?」という反発だった。

 こうした価値観の違う人と、同じ船に乗り続けるのは不可能
だった。彼らには去って貰い、新たにワタミの介護の経営方針
に惹かれた人々200人がスタッフに加わった。

■6.「4大ゼロ運動」で「理想のホーム」を目指す■

 新しく加わった人も含め、スタッフ全員にワタミ流のサービ
スが実践できるよう厳しい研修を行った。それまでの「仲良し
クラブ」的な仕事に慣れていた人々は、外食産業で勝ち残って
きたワタミの研修の厳しさに面食らったようだった。

 この鍛え上げたスタッフの力によって、渡邉氏は施設介護に
おける「新たなスタンダード」の確立を目指した。平たく言え
ば、競合他社が真似したくなるような「理想のホーム」を作ろ
うと考えた。

 たとえば、目標の一つに「4大ゼロ運動」がある。すなわち
「おむつ-ゼロ」「特殊浴-ゼロ」「経管食-ゼロ」「車椅子
-ゼロ」を目標にした活動である。

 歩きたがらないお年寄りは、車椅子に乗せてしまえば手が掛
からない。だが「公園で桜を見たい」というお年寄りがいれば、
「公園に階段があるから、歩けるようになりましょう」と励ま
しながら、歩行訓練をする。入居者の自立を出来る限り支援す
る。[1]

■7.「ワタミの食事」■

 食事についても同様だ。渡邉氏が老人ホームのお年寄りに直
接聞くと、「一番の楽しみは食事なんです」という答えがよく
返ってきた。しかし、従来の介護施設の食事は「栄養が満たさ
れていて、コストが安ければいい」という観点のみで支給され
ていたきらいがある。

 元気な人のための「通常食」はともかく、食材を小さくきざ
んだ「きざみ食」、ひどいのは通常食をミキサーにかけてドロ
ドロの流動食にした「ミキサー食」などというものがある。見
ただけで食欲がなくなり、当然、お年寄りも食べたがらない。

 通常食でも、盛りつけの間にすっかり冷めてしまった食事を
出したりする。居酒屋で冷たくなった焼き魚や、生暖かい冷や
奴が出てきたら、「こんな店、二度と来るか!」となるはずだ。
しかし、老人ホームのお年寄りは、今日のご飯が不味かったら、
明日は別の老人ホームで食べようというわけにいかない。

 その点、外食産業で勝ち抜いてきたワタミ・グループには、
「和民」のコンセプトそのままに、「手づくり」で「安心・安
全」で「季節感」があり、「バラエティ豊か」なメニューの提
供がすぐにも可能だった。暖かいものは暖かく、冷たいものは
冷たくのノウハウは、ワタミのホームでしっかり活かされた。

「通常食」を食べられないお年寄りには、独自の「ソフト食」
を開発した。料理を素材毎にミキサーにかけた後、再度味を調
え、寒天やゼラチン、デンプンなどで固めて、形あるものにし
てお出しする。

 こうした「ワタミの食事」に切り替えた翌日から、お年寄り
の食欲が増したことを、渡邉氏は実際に自分の目で確かめた。
そして食事に関しての入居者の満足度を95%にまで高めてい
く、という目標を掲げて、努力を続けている。

■8.「民」による「公」的事業■

 ワタミの介護は、こうした質の高いサービスを、現在39棟
の老人ホームの入居者2500人に提供している。

 買収した当初は60%だった入居率も、現在は平均95%。
順番待ちも含めると、ほぼ100%となっている。この数字だ
け見ても、従来よりもはるかに高い「顧客満足」を実現してい
ることが分かる。

 老人ホームは施設費やスタッフ人件費など固定費の比率が高
いので、損益分岐点は入居率70%程度となる。ほとんどの老
人ホームが赤字に陥っているのは、入居率が50%から60%
の水準だからだ。

 こうしてワタミの介護は、質の高いサービスを提供し、それ
によって入居率を高めて、収益を上げられる事業となった。ま
た、4大ゼロ運動でお年寄りの自立を助けることで、国の給付
も少なくて済む。お年寄りも、事業者も、国も得をするという
まさに「三方一両得」である。従来型の老人ホームでは、お年
寄りは不満、経営は赤字、国の給付も膨大と「三方一両損」だっ
たのが、民間の「経営」を持ち込むことで、大きく改革された
のである。

 渡邉氏の挑戦は、宅急便の創始者、クロネコヤマトの小倉昌
男[a]を思い起こさせる。宅急便が登場する前は、小荷物を郵
便局まで持ち込んで、いつ着くのか分からない「小包」サービ
スを使うしかなかった。小倉は運輸省のがんじがらめの規制と
戦い抜いて「クロネコヤマトの宅急便」を始め、その成功を見
た多くの業者が参入して、今日の便利この上ない宅配便サービ
スが当たり前の世界が実現できたのである。

 いまどき宅配の分野で「民間業者に任せておいたら、金儲け
主義でどんな悪さをするか知れないので、官が直接、事業を運
営すべきだ」などと言う人はいない。「官」は「独占的事業者」
を辞め、公正な競争の土俵作り、消費者を守るルール作り、と
いう「官」本来の役割に戻るべきなのである。

 クロネコヤマトの先例のように、ワタミの介護を多くの老人
ホームが真似し、さらにその上を行こうとすれば、その競争を
通じて、我が国の老人介護は一変するだろう。宅配便のような
高品質のサービスが、老人介護の分野でも当たり前になる日は
近いかも知れない。
(文責:伊勢雅臣)


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プロフィール

taka

Author:taka
ニックネーム:たかちゃん
 性 別  :男
 血液型  :O型
 現在地  :広島市

69歳の今も、何にでも興味を持ち、いつも熱き心で青春だ。人生は、成るようになるし、また成るようにしかならん。起きるべきことが起きるから深呼吸してリラックス リラックス。
「明日死ぬと思って生きよ 永遠に生きると思って学べ」を心に。



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