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素敵な話

 漂白の俳人 山頭火の歩いた道/大山澄太(俳人)

私も山頭火の庵に行って度々泊まったが、
一番感激した話をしましょう。

ある年の暮れ、仕事で山頭火の庵の近くまで来たので、
酒を持って訪ねました。
夜まで話が弾み、さて帰ろうとすると、
「澄太君、すまんが長い間、人間と一緒に寝ておらんので、
 寒いぼろの庵だが、ここへ泊まってくれ」という。

寂しがる先輩を残して帰るのもなんだから、
「それでは泊まろう」ということになったが、
いざ寝ようとしたら蒲団が一つしかない。

山頭火が
「君が泊まるので嬉しいから寝ずに起きとる」というので、
蒲団に入ったが、小さくて薄い蒲団のため寒くて眠れない。
「どうも寒くて、眠れそうにない」というと、
山頭火は泣きそうな顔をして「済まんことだ」と
いいながら押し入れから夏の単衣を出して私にかける。

私は「まだ寒い」というと、紐のついた物を持ってくる。
ようく見ると赤い越中ふんどしなんです。
それを私の首に巻く。
臭いことはないが、いい気持ちはしないので
「それはいらん」と取って外す。
そのうちに酒の酔いも手伝って寝てしまいました。

東側の障子がわずかに白んだ、夜明けの4時頃だろうか、
私はふと目が覚めた。
山頭火はどこかとこう首を回して捜すと、
すぐ近いところで僕の方を向いて、
じーっと坐禅を組んでいる。
その横顔に夜明けの光が差して、
生きた仏さまのように見えましたなあ。

妙に涙が出て仕方ない。私は思わず、彼を拝んだもんです。
さらによく見ると、山頭火の後ろに柱があり、
その柱がゆがんでいる。
障子を閉めても透き間ができ、
そこから夜明けの風が槍のように入ってきよる。

それを防ぐために山頭火は、自分の身体をびょうぶにして、
徹夜で私を風から守ってくれたのです。
親でもできんことをしてくれておる。
私はしばらく泣けて泣けて仕方がなかった。

こういう人間か、仏かわからんような存在が、
軒に立たねば米ももらえんし、好きな酒も飲めん。
そのとき私は月給の4分の1を
山頭火に使ってもらうことに決めました。
山頭火が死ぬまでそうしました。


           『致知』1987年6月号の記事より抜粋

                     http://www.chichi.co.jp/

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プロフィール

taka

Author:taka
ニックネーム:孝ちゃん
 性 別  :男
 血液型  :O型
 現在地  :広島市

69歳の今も、何にでも興味を持ち、いつも熱き心で青春だ。人生は、成るようになるし、また成るようにしかならん。起きるべきことが起きるから深呼吸してリラックス リラックス。
「明日死ぬと思って生きよ 永遠に生きると思って学べ」を心に。

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Tony Bennett, Lady Gaga - Winter Wonderl
Von Trapp Kids All Grown Up! -The Sound
ひろしま協創高校バトン部
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